二万円

この前きた相談者について。
その人はここひとつきほど、家を留守にしていたらしい。らしいというのは、こっちに電話はかかってきていたから、まずは生存確認はできていて、ただ相手が家じゃないところに生活していたということが、携帯電話だとわからないという意味である。
彼は70才台の独居である。ご近所から通報があり、一度居室に立ち入りをした。部屋で死んでないか見に行った訳だ。
彼が話すには、この春まで、自治会の会計をしていたそうだ。ただ、年度変わりで会計係が交代となったとき、どうしても収支が合わないのだと。二万円。
それで、申し訳なさから死んでお詫びをと、失踪に至ったのだという。
俺は計算ができなくなった、よもや使い込みしたか、その事実を忘れてしまうほどボケちまったか。
私は彼にきいてみた、そんな安い命なの？
返していく気があるのなら、お詫びして、まいつき1000円でも、返せばそれが最大のつぐないなのでは？

病院に同行しようかどうしようか、決めかねているのが今日までのところである。